「収入」と「人生の幸福度」の相関性

読書日記
どうせ働くなら給料が多い仕事をしたいと思うのは当然ですが、給料の多さは私たちの幸福度にほとんど関係ないことが先行研究からわかっています。
それでは、給料が実際どれくらい私たちの幸福度に影響するのか、給料よりも影響度が高い要素は何なのかを見ていきましょう。

給料の多さと幸福度はほぼ無関係

フロリダ大学のメタ分析では、日本、アメリカ、インド、タイなど様々な国のデータを使って答えを出しています。

給料と仕事に対する満足度の相関係数はr=0.15のみです。相関係数は2つのデータの相関性を示す数値で、1に近いほど関係があるとみなされます。

例えば、生まれ持った性格と人がとる行動の相関係数はr=0.9ぐらいと言われています。人の性格と行動に関係があるのは誰もがわかることで、それはデータとしても表れているわけです。

それに比べると、給料と仕事に対する満足度の相関性r=0.15はかなり低いことが分かります。給料の高さで仕事を選んでも、ほぼほぼ幸福度は上昇しないと言い切ることができます。

 

収入アップによる幸福度アップは非常に小さい

収入がアップして喜ばない人はいないと思いますが、収入アップが幸福に与える影響は一時的なもので、人生の幸福度をあげるうえではあまり意味を成しません。

収入アップと他のいくつかのライフイベントによって受ける幸福度の上昇レベルを比べた研究結果があります。

  1. 仲の良いパートナーとの結婚から得られる幸福度の上昇率は、収入アップから得られる幸福度の上昇より767%大きい。
  2. 健康レベルが改善したときの幸福度の上昇率は、収入アップから得られる幸福度の上昇より6531%も大きい。

稼ぎは少なくても、良好な人間関係を築いて健康的な生活をしている方が、人生の幸福度はよっぽど高いのです。

ただし、お金が増えればできることは増えるので、増えた収入を趣味などに投資して、ネットワークや健康レベルを改善できれば良いです。

収入アップのために身を削って働くことに意味はないと言えます。

 

年収800万円が幸福度のピーク?

収入と幸福度の関係については、ノーベル賞受賞者ダニエル・カーネマンの研究が有名です。

研究によると、年収はおよそ800万に達した時点で幸福度の上昇は横ばいになります。

日本の内閣府による2019年の報告では、一番満足度の差が大きいのは、100万円〜300万円の世帯と300万円〜500万円を比べたときで、それ以降は上昇しているものの上昇率は大きくありません。しかも3000万円を超えてからは逆に満足度が下がります。

つまり、あなたの年収が300万円〜500万円であれば、そこから頑張って収入を増やしても、人生に対する幸福度はそこまで大きくアップしないことになります。

すでに500万円ぐらいの年収があるけれど、幸せのためにもっと稼ぎたいと考えている人は、収入をあげることよりも、人間関係を作ったり、健康に過ごしたり、自分の成長を感じれることに打ち込んだりする方がよっぽど幸せになれるかもしれません。

 

収入アップによる幸福度アップは1年で終わる

収入アップすれば多少なり幸福感を感じますが、残念ながら1年ほどしたら慣れて新鮮な感情はなくなります。

元々の人間の性質や環境の関係から、これは当然として起きる現象です。

  1. お金を持つほど限界効用が下がる
  2. お金の幸福は相対的な価値で決まる

限界効用とは、物やサービスが増えればそれだけメリットが減るという現象のことです。

いくら美味しいケーキでも、何個も食べるうちに得られる幸福感は減っていきます。

バーゼル大学の研究では、年収アップで得られる幸福度の上昇は、年収アップ直後が最大で、どんどん下降しいきます。1年経てばそこからさらに急降下し、3年後には元通りとなります。

 

収入から得られる幸福度は自分ではなく周囲で決まる

収入から得られる幸せは、周囲の影響を大きく受けます。

自分が年収800万円でも周りの人がそれ以上稼いでいれば感じる幸福度は低くなります。

逆に自分が年収500万円でも周りの人が皆300万円ぐらいであれば感じる幸福度は高くなります。

これは心理学では「ランク所得」と呼ばれる考えで、要は人間はそもそも他人と比較した基準で幸福度を決めてしまうのです。

よって、人生の幸せを収入アップという手段で目指すのは非常に効率が悪いという結論になります。

 

まとめ

以上、収入アップと人生の幸福度アップの関係性についてでした。
お金があればできることは増えますが、収入アップそれ自体から得られる幸福度は非常に小さく短命です。
人生の幸福度を重視するのであれば、健康、人間関係、自分の成長といった他の要素にフォーカスして行く方がよいでしょう。
収入アップはこれらの次に考えてみてもいいかもしれません。
科学的な適職 - 鈴木祐