怒りの感情はアレルギーと似た性質があり、人によって程度の差があります。
体質改善でアレルギーを軽減できるように、「ムダに怒らなくなる考え方」を身につけることで、怒りという感情に振り回されないメンタルを鍛える根本改善が可能になります。
しかし、この根本改善はすぐにできるものではなく、継続的な努力が必要です。
つまり時間が必要というわけです。
そんな中で、日常では様々なストレスで怒りの感情が顔を出しますので、その場しのぎでも対処したいですよね。
- すれ違いざまにぶつかった
- 相手の態度や言葉に腹が立った
- レストランで長時間待たされた
- 渋滞で全然動けない
など、様々な状況があります。
そうなると、
- イライラして思わず大声を出してしまう
- ムッとすると態度に出てしまう
など、反射的に感情を表に出してしまいます。
日常の怒りに対処できるように、継続的に改善に取り組む一方で、即効性のあるテクニックを学び、実践していくことも重要です。
ここでは、即効性のあるアンガーマネジメントとして、7つのテクニックを紹介していきます。
6秒ルールで怒りのピークをやり過ごす

イラっとしたときに一番よくないのが、反射的に怒りの感情を表に出してしまうことです。
相手に挑発された時などが正にそうで、反射的に感情に任せて発言すれば、自分も相手もヒートアップしてしまい、事態は悪化する一方です。
スポーツ選手でも、カッとなって乱闘騒ぎを起こし退場処分になるなど、反射的な怒りで取り返しのつかない事態になるケースが見られることがあります。
(もちろん色々なフラストレーションが積もって起こる場合もありますが)
ここで役立つのが、6秒ルールです。
イラっとすることがあったら、「1、2、3…」と6秒数えましょう。
反射的な怒りのピークは6秒で落ち着くと言われています。
数えている間に、怒りが徐々に収まってくるので、反射的な言動による失敗を避けることができます。
数を数える以外にも、深呼吸をする、他のことを考えるなどの方法で、時間を置くことができればOKです。
また、このテクニックを使えば、6秒待っている間にも「自分は怒りをコントロールしている」と感じることができ、自信がついてきて、メンタルが安定します。
「グラウンディング」で目の前のものに意識を向ける

イライラすることを思い出した時には、怒りとは関係のない目の前のものに意識を向け、怒りから目をそらすことが有効です。
未来や過去ではなく、「今」に意識を向けるテクニックです。
これをグラウンディングと呼びます。
瞑想にも近いテクニックですが、継続的な積み上げが必要な瞑想と比べ、グラウンディングはすぐに実践することができます。
実践しやすいのは、意識を地面に向けるなど、目の前の景色に集中力を向けることです。
たとえば、上司の態度を思い出してイライラするときは、オフィスの中のものを観察しましょう。
「壁は白いな」
「窓が汚れてるな」
など、目の前のものに意識を集中しましょう。
渋滞に巻き込まれ、「帰るのが遅くなる」「いつになったら動くのか」などと思った時は、前の車の色に意識を向けるなど、今見えるものに意識をフォーカスしましょう。
自分の動作を実況中継し、怒りと距離を置く

イライラしたときは、自分の動作を実況するというテクニックです。
これは、現在に集中するという点では、グラウンディングのテクニックとも共通します。
また、6秒ルール同様に、6秒だけでも実況すれば怒りのピークを脱することができます。
「彼はまたイライラしているようだ」
「ここで水に手を伸ばしたぞー」
などと実況してみれば、だんだん怒っていることがバカバカしくなってくるはずです。
また、「彼」などと他人事のように実況してみれば、自分の怒りからより距離を置きやすくなります。
このテクニックは、声に出さずに頭の中で実況するだけでも十分です。
タイムアウトで怒りから一時退散する

スポーツ競技でも、流れを変えるためにタイムアウトをとることがあります。
これと同じで、怒りの感情が湧いたときには、いったんその場を離れて気分を落ち着かせることも有効です。
要は「逃げる」ということです。
「退却戦略」「撤退戦略」などと考えれば、多少聞こえは良いかもしれません。
アメリカのアンガーマネジメントで最初に学ぶのが、このテクニックだと言われています。
イライラした感情をそのまま相手にぶつけて、場の空気を壊したり人間関係を壊すぐらいなら、一旦その場を離れた方がマシという話です。
「今はちょっと話しづらいから、いったん待って」
「ちょっと一旦中断させてください」
などと言って、まず落ち着く時間をとりましょう。
セルフトークとコーピング・マントラで怒りの増幅を防ぐ

1つはポジティブ・セルフトークといい、自分を励ますというテクニックです。
「このイライラを乗り越えればもっと強くなれる」
「この程度のイライラは大したことない」
のように、勇気を与える言葉を自分にかけてあげます。
偉人の名言や尊敬する人の言葉なども有効です。
気持ちを盛り上げる言葉を自分に投げかけましょう。
もう1つは、コーピング・マントラ。
コーピング:切り抜ける、マントラ:呪文という意味です。
イラっとしたときは、自分を落ち着かせるフレーズを口にしたり、頭の中でつぶやくというテクニックです。
偉人の言葉のように大げさなものでなくても、
「せんぜん大丈夫」
「何とかなるよ」
「気にするなよ」
というように、友達同士で掛け合うような言葉でオッケーです。
イライラしたときにすぐに使えるように、あらかじめいくつかフレーズを用意しておきましょう。
イメージの力で怒りの暴走を止める

怒りの原因となった過去の出来事を思い出し、原因について考えると、どんどん思い出して怒りがエスカレートしてしまいます。
そんな時には、思考停止(ストップシンキング)が有効です。
頭を真っ白にして、何も考えないようにするという方法ですが、何も考えないというのは、かなり難しいことです。
相当な訓練を積まなければ習得できるものではないでしょう。
そこで「真っ白な紙」「真っ白な壁」などをイメージすることで、思考停止に近い効果を得ることができます。
頭の中にイメージして、その1点に集中するという意味では、グラウンディングに近いテクニックと言えます。
他にも、ごみ箱をイメージする方法もあります。
怒りを感じた出来事を紙や個体としてイメージし、それを握りつぶしてゴミ箱に捨てるイメージです。
イライラを1つずつゴミ箱に入れていくことで、心が軽くなっていく感覚を感じることができます。
怒りのレベルを評価する

穏やか→不愉快→腹が立つ→爆発寸前→暴れたい
のように、怒りのレベルを設定し、10点満点で採点します。
怒りのレベルを数値化し、現状を把握するという作業です。
感じた怒りのレベルに点数をつけることで、「むかついた」「イライラした」という程度の曖昧な感情を、より正確に把握できるようになります。
この怒りのレベルを評価する作業は、根本改善への入り口、対策の土台ともなりますが、この作業を行うだけでも、怒りの感情と距離を置くことができます。
そして、自分を客観的に見れるようになり、冷静になれるので、即効性のあるテクニックとしても活用できるのです。
何事も、対策を打つには「現状を把握する」ことが第一です。
風邪を引いたときは体温を計り、ダイエットを始める時に体重を計るのと同じ原理です。
できれば、ストレスダイアリーのように記録をつけて、自分がどんな時に怒りを感じているのかなど、データ収集して分析しましょう。
自分の怒りの傾向が分かってくれば、対策も立てやすくなります。
まとめ

誰でもすぐに実践できるイライラ回避のテクニックを7つ紹介してきました。
まずは色々試してみて、自分に合うものを探してみてください。
ここで紹介した方法を自分でアレンジしてみたり、他に有効な方法がないか探してみるのも、面白いでしょう。
イライラする相手や対象を、RPGゲームのように敵に例えて、自分のレベルアップする様子をイメージしてみても良いでしょう。
もっとシンプルに、幸せな気分になれる写真をスマホに仕込んでおいて、イラっとしたときに見るだけでも良いです。
いざという時に使える自分なりの武器を備えておくと、それだけでもメンタルは安定してくるはずです。